人と違う力を持つことは、いつも幸せでしょうか。
山岸凉子さんの『日出処の天子』は、のちの聖徳太子=厩戸王子の少年期を描いた飛鳥時代の物語です。
飛び抜けた才能ゆえに孤立する痛みは、現代を生きる私たちの胸にも刺さります。あらすじ、読みどころ、お得に読む方法までまとめました。
『日出処の天子』とは——少女漫画の金字塔
まずは基本情報からです。少女漫画でありながら、日本史マンガの傑作として読み継がれてきた一作です。
作者は山岸凉子さん。1980年から白泉社の雑誌『LaLa』で連載されました。第7回講談社漫画賞を受賞しています。
現在は完全版 全7巻で読めます。電子書籍版もそろっています。舞台は6世紀後半、蘇我氏と物部氏が対立する飛鳥の都です。
あらすじ(ネタバレ配慮)
物語の主役は二人います。超常の力を持つ美少年・厩戸王子と、名門蘇我氏の御曹司・毛人(えみし)です。
厩戸は幽くして人の心を読み、雨を呼び、未来すら見通します。けれどその力は、彼を周囲から遠ざけました。母にさえ畏れられる孤独を抱えています。
毛人は厩戸の聡明さに惹かれ、同時に怯えます。仏教の受容をめぐる蘇我と物部の争いが、二人を歴史の渦へ巻き込んでいきます。
厩戸が何を願い、毛人がどう応えるのか。その核心は、ぜひご自身の目で確かめてください。
読みどころ3つ
1. 厩戸王子という「孤独な天才」の造形
聖徳太子といえば、お札の肖像を思い浮かべる方も多いはずです。本作の厩戸は、その聖人像をいったん壊します。
美しく、冷たく、誰よりも淋しい。人間離れした力を持つ少年の内面が、痛いほど丁寧に描かれます。私はこの造形に唐りました。
2. 飛鳥の政治劇がそのまま心理劇になる
崇仏論争や丁未の乱といった史実が背景に流れます。教科書では数行の出来事です。
それが本作では、人の欲と恐れがぶつかる生々しいドラマになります。歴史が苦手でも置いていかれません。
3. 割り切れない感情の描き方
厩戸と毛人の関係は、友情とも畏怖ともつかない複雑なものです。
好きと怖いが同居する気持ちを、これほど精密に描いた漫画は珍しいでしょう。個人的に一番ぞくりとした部分でした。
現代の私たちへ——この作品が「効く」場面
飛鳥の物語は、今の悩みにも静かに答えてくれます。三つの場面で考えてみます。
人と違う自分を持て余している人へ
厩戸の力は祝福であり、呪いでもあります。秀でた何かが、かえって人を孤立させることがあるからです。
突き抜けた才能の裏にある淋しさを知ると、自分の異質さとの付き合い方が少し見えてきます。
組織の論理に飲まれそうな時に
毛人は名門の跡取りとして、家の都合と自分の心の間で揼れます。立場と本音の板挟みは、現代の私たちにも覚えがあるはずです。
彼の迷いを追ううちに、流されない芯とは何かを問い直せます。
割り切れない関係に疲れた時に
人の感情は、好きか嫌いかで線を引けません。畏れながら惹かれる毛人の心は、その複雑さの標本のようです。
白黒つかない関係をそのまま抱える強さを、この物語は教えてくれます。
こんな人におすすめ
- 飛鳥時代と聖徳太子の人物像を、物語で深く知りたい人
- 心理描写の濃い少女漫画の名作を読みたい人
- 権力闘争とサスペンスが好きな人
お得に読む方法
完全版は全7巻でまとまっています。まず1巻を試してから揃えるのもおすすめです。電子なら場所も取りません。
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よくある質問
全何巻で完結していますか?
完全版は全7巻で完結しています。電子書籍の完全版もそろっているので、好みの形で最後まで読めます。
史実の聖徳太子と違うのですか?
超常の力など、創作として描かれた要素があります。史実の骨格は踏まえつつ、人物像を大胆に解釈した物語として楽しんでください。
歴史にくわしくなくても読めますか?
読めます。難しい用語は物語の中で自然に分かる作りです。飛鳥時代の入り口としてもおすすめできます。
どこから読むのがよいですか?
1巻から順に読んでください。厩戸と毛人の関係が少しずつ深まる構成なので、順番に追うほど引き込まれます。
まとめ
『日出処の天子』は、聖徳太子という名前の奥にいた一人の少年を描いた物語です。
個人的に一番好きなのは、強さと淋しさが裏表になった厩戸の表情です。読むたびに胸が締めつけられます。
飛鳥の都を舞台にした心理劇を、ぜひ味わってみてください。



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