東福寺 歴史さんぽ|通天橋と八相の庭を歩く前に、『日本の10大庭園』『禅宗の歴史』どちらから読むか

歴史さんぽ

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紅葉の写真で必ず出てくる、あの空中回廊。京都・東福寺の通天橋です。ただ、この寺を「紅葉の名所」としてだけ見て帰るのは、正直もったいないと感じました。ここは鎌倉時代に朝廷の実力者が建てた、京都五山の一つだからです。

この記事では、東福寺で実際に足を止めた三か所を写真で紹介したうえで、歩く前に読むならどの一冊かを三冊で比べます。値段も目的もかなり違うので、選び方だけ先に知っておくと現地での見え方が変わります。

迷ったら、この一冊から

重森千靑『日本の10大庭園』祥伝社新書(1,078円)。八相の庭を作った重森三玲の孫にあたる作庭家が、庭の「どこを見るか」を十庭で解説しています。新書一冊なので、行きの電車で読み切れます。

東福寺は「東大寺」と「興福寺」から一字ずつ取った寺

紅葉の東福寺・通天橋から見た渓谷のもみじ
通天橋から。眼下は洗玉澗(せんぎょくかん)と呼ばれる谷です(写真:ゆうた1127 / PIXTA)

創建は一二三六年。摂政・関白を務めた九条道家が発願し、宋から帰った円爾(えんに/聖一国師)を開山に迎えました。奈良の東大寺と興福寺に並ぶ大寺を京都にも、という意図から一字ずつ取って東福寺と名づけられたと伝えられています。名前そのものが、この寺の野心の大きさを示しています。

通天橋は、その広い境内を南北に分ける谷にかかる橋。谷の名は洗玉澗といい、ここに植わっているのは葉が三つに分かれる「通天もみじ」です。※諸説ありますが、円爾が宋から持ち帰った品種だと伝えられています。同じ禅寺でも、北条時宗が建てた鎌倉の円覚寺が武家の寺なら、こちらは公家が建てた寺です。

三門は現存最古で、国宝

東福寺の三門。国宝に指定された巨大な二階建ての門
東福寺の三門。禅寺の三門としては現存最古とされます(写真:JACK SWING / PIXTA)

境内でいちばん驚いたのはここでした。応永年間に足利義持が再建したもので、禅宗寺院の三門としては現存最古とされ、国宝に指定されています。近くまで寄ると、柱の太さと軒の深さで距離感が狂います。

三門とは「空・無相・無作」の三つの解脱門を意味する、と説明されます。つまりこの門は建築であると同時に思想の図解でもあるわけで、その前提を知らないまま通り抜けると、ただの大きな門で終わります。私は一度通り過ぎてから引き返しました。

八相の庭は、昭和十四年の「新しい庭」

東福寺本坊庭園・八相の庭。苔の築山と白砂の枯山水
本坊庭園「八相の庭」。市松模様の苔で知られる北庭と同じ庭園です(写真:Taka-DAI / PIXTA)

方丈をぐるりと囲む本坊庭園は、一九三九年に重森三玲が作庭しました。つまり七百年の寺のなかで、この庭だけが昭和の作品です。市松模様に苔と石を並べた北庭は、写真で見ると現代アートに見えますが、使われている石は境内の古い敷石を再利用したものだと伝えられています。

古いものを使って新しい形をつくる、という発想がそのまま形になっている場所です。ここを「古い庭」として見るか「昭和のモダンデザイン」として見るかで、感想がまるで変わります。

歩く前に読む三冊を、目的別に比べる

いちばん安く、禅の骨格だけつかみたい人

白取春彦『〈マンガ〉禅入門 悟りへの道』サンマーク文庫が最短です。文庫でまんが仕立てなので、禅語や坐禅の考え方を一時間ほどでひととおりなぞれます。深さは求められませんが、三門の「三つの解脱門」の意味は、この一冊で足ります。

庭の見方を持ち帰りたい人

重森千靑『日本の10大庭園』祥伝社新書(1,078円)。八相の庭を作った重森三玲の孫が書いた新書で、庭を「作者の意図から読む」視点が身につきます。作った本人の言葉で読みたいなら重森三玲『庭を見る心得』STANDARD BOOKS、電子なら同書のKindle版が対応します。楽天なら『日本の10大庭園』(祥伝社新書)と『重森三玲 庭を見る心得』が新品で並んでいます。

禅宗そのものの通史へ進みたい人

今枝愛真『禅宗の歴史』読みなおす日本史(2,860円)。栄西・道元から五山の成立、そして室町政権との関係までを一冊で追える本です。値段は三冊でいちばん張りますが、東福寺・円覚寺・南禅寺と続けて訪ねる予定があるなら、結局これが最も安上がりでした。

三冊の結論

一日で東福寺だけを見るなら『日本の10大庭園』。禅寺をこれから何か所も回るなら『禅宗の歴史』。読書そのものに時間を割きたくないなら『〈マンガ〉禅入門』。この順で選べば外しません。私は二冊目を鞄に入れて行き、通天橋の上で開いて、結局その場では読まずに帰ってから読み返しました。庭は、見た記憶があるほうが本の理解が早いようです。

同じ「読む→歩く→また読む」の順路は、山寺・立石寺や清水寺、嵐山・嵯峨でも同じように効きました。組み立て方の全体像は歴史さんぽ完全ガイドに、前回の飛鳥寺・甘樫丘の回もあわせてどうぞ。総額が気になるときは全巻そろえるといくらかと読み放題との併用が参考になります。

現代の私たちへ

八相の庭は、七百年の寺に昭和の人間が付け足した庭です。それが今では東福寺を代表する景色になっている。古いものを守るというのは、手を触れないことではなく、その時代の最良を足していくことなのかもしれません。通天橋の紅葉より、私はこの庭のほうを長く覚えていました。

まずは費用をかけずに一冊ためす

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あわせて読む:永源寺 歴史さんぽ|紅葉の山門と、禅と近江商人を同じ谷で読む

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