東周斎雅楽・魚戸おさむ『イリヤッド 入矢堂見聞録』全15巻あらすじ|文庫10巻・電子・紙セットの総額を分解して選ぶ

漫画

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考古学界を追われ、日本で古道具屋を営んでいた男が、世界の富豪が集めた極秘プロジェクトに呼び出される。探す対象はアトランティス。東周斎雅楽・魚戸おさむ『イリヤッド 入矢堂見聞録』は、全15巻で完結した本格考古学ミステリーです。そして全巻そろえようとしたとき、版が三つあって総額が三通りになるという、この作品ならではの迷いどころがあります。

『イリヤッド 入矢堂見聞録』とはどんな作品か

小学館のビッグコミックスから全15巻で完結している、東周斎雅楽さん原作・魚戸おさむさん作画の作品です。主人公の入矢修造は、考古学界から追放されて古道具屋に身を置いていた人物で、トレジャーハンターとして「アトランティスを探す」プロジェクトに指名されます。

歴史まんがというと、たいていは実在の時代の中を実在の人物が歩きます。この作品はそこが違っていて、舞台は現代、追いかける対象だけが太古です。エーゲ海の遺跡、古代オリエントの記録、伝承として残った断片——それらを現代の人間が読み解いていく形なので、歴史の知識がゼロでも入口でつまずきません。

アトランティスそのものは、プラトンの記述を出発点にして今も議論が続いている題材です。作中の説もあくまで作品の立てた仮説であって、史実として確定したものではありません(※諸説あり)。そのうえで、仮説の組み立て方が丁寧なので、読み物としての説得力がきちんと立っています。

あらすじ(結末には触れません)

幻の文明アトランティスを探すという極秘プロジェクトが、世界の名だたる富豪たちの出資で動き出します。指名されたのは、日本で古道具屋を営む入矢修造。ところがその直後から、プロジェクトに参加した富豪たちが次々と謎の死を遂げていきます。

入矢は、プロジェクトの主宰者エンドレの娘・ユリとともに旅に出ます。行き先は遺跡であり、古文書であり、ときに誰かが隠したがっている場所です。「見つけること」と「見つけさせまいとする力」が同時に走る——それがこの作品の推進力で、巻を追うごとに、考古学のパートと追跡のパートが編み込まれていきます。

実際に読んで印象に残った三つのこと

「モノが証拠になる」という感覚が体に入る

私が読んでいていちばん面白かったのは、壺の破片や石の刻み目といった小さなモノから話が動き出すところでした。教科書では結論だけが書いてありますが、この作品は結論の手前にある推論の道筋を毎回見せてくれます。読み終えたあと、博物館の展示ケースの見え方が変わりました。

舞台が地中海から広がっていく地理の快感

エーゲ海周辺から始まった話が、巻が進むにつれて古代オリエントや別の海域へと広がっていきます。地図を横に置いて読むと、海が道だった時代の感覚がつかめます。日本の歴史を海の側から読み直した海から読む日本史 完全ガイドと並べて読むと、離れた海域どうしが同じ理屈で動いていたことがわかります。

15巻という長さが、途中で失速しない

長期連載ものは中盤がだれることがありますが、この作品は謎の層が入れ子になっているので、一段解けるたびに次の層が顔を出します。完結済みで結末まで読めることがはっきりしているのも、長編を始めるときには大きな安心材料でした。

メリット歴史の前提知識がいらず、ミステリーとして読み始められます。
向かない人・注意実在の合戦や政局を追いたい人には、主題がずれます。

三つの版で総額がいくら変わるか

この作品は、ビッグコミックスの全15巻、その紙の全巻セット、そして小学館文庫版の全10巻完結セットという三つの形で流通しています。中身は同じでも巻数の区切りと判型が違うので、総額が一段ずつずれます。確認した時点の価格で並べると、こうなりました。

①電子で1巻ずつ買う場合

1巻あたり770円です。15巻すべてをそろえるとおよそ1万1550円。いちばん高いように見えますが、この方式だけが「1巻だけ試して、合わなければそこで止める」という降り方を許してくれます。合うかどうかわからない長編に対しては、実質いちばん安く終われる選び方でもあります。

②紙の全15巻セットを一度に買う場合

全15巻セットでおよそ1万3090円。三つのなかでは最も高い値がついていますが、判型が大きく、遺跡や古文書の描き込みがそのまま読めるのはこの版です。絵の情報量で選ぶならここになります。在庫は少部数で動くので、価格も在庫数もそのつど変わります。

③文庫版の全10巻完結セットを買う場合

小学館文庫版は全10巻で完結していて、セットでおよそ9556円。三つのなかでいちばん安く、置き場所も取りません。判型が小さいぶん細かい描き込みは見づらくなるので、物語を追うことが目的なら文庫、絵を見ることが目的なら大判という分け方になります。

差は最大でおよそ3500円です。読み放題やレンタルを混ぜると総額がさらに動くので、その計算のしかたは歴史まんがは読み放題とレンタルの併用がいちばん安いにまとめてあります。

どれを選ぶか、迷ったときの決め方

私が人にすすめるときは、まず「この作品が自分に合うかどうかを確かめたい」のか「もう読むと決めている」のかを聞きます。前者なら電子の1巻から。後者で置き場所と予算を重く見るなら文庫セット、絵の密度を重く見るなら紙の全巻セットです。同じ地中海世界を扱った技来静也『拳闘暗黒伝セスタス』全15巻や、時代ごとの名作を並べたヨーロッパの歴史を漫画で学ぶ完全ガイドも、同じ考え方で選べます。

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読む前に迷いやすいところ

全何巻ですか。完結していますか。
ビッグコミックス版が全15巻、小学館文庫版が全10巻で、どちらも完結しています。途中で止まる心配はありません。
考古学や世界史の知識がないと読めませんか。
必要ありません。主人公が現代の人間で、専門的な背景は作中で説明されます。むしろ知識のない状態で読むほうが、推論が明かされる順番を素直に楽しめます。
作中のアトランティス説は史実ですか。
史実として確定したものではありません。プラトンの記述をめぐる議論は現在も続いており、作中の説はあくまで物語のために組まれた仮説として読むのが安全です。
💡
長編をそろえる前に版を比べる習慣がつくと、歴史まんがの出費は目に見えて軽くなります。

現代の私たちへ

この作品を読み終えて残ったのは、アトランティスがあったかどうかではなく、断片から筋を立てるときに人はどれだけ慎重でいられるかという問いでした。入矢は証拠が足りないところでは足りないと言い、それでも次の一歩を止めません。手元の情報が欠けたまま判断しなければならない場面は、仕事でも暮らしでも毎日あります。決めつけずに、それでも動く。15巻かけて描かれるのは、そういう態度そのものだったように思います。

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