森秀樹『墨攻』全11巻のあらすじと結末|たった一人で城を守った、墨家という思想

漫画

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「城を攻める話」は数あれど、「城を守るだけの話」を十一巻ぶん読んだのは、私はこの作品が初めてでした。森秀樹さんの『墨攻(ぼっこう)』は、紀元前の中国を舞台に、たった一人で小さな城へ乗り込んだ男が、一万五千の軍勢を相手に守り抜こうとする物語です。派手な英雄譚に疲れた夜に、静かに刺さります。

『墨攻』とはどんな作品か

小学館『ビッグコミック』で連載された歴史漫画で、作画=森秀樹さん、原作=酒見賢一さん、脚本=久保田千太郎さんという三名の共同名義で刊行されています。第1巻は1992年9月30日刊行、全11巻で完結。のちに小学館文庫版(全8巻)も出ています。※著者表記・刊行日・巻数はAmazon商品ページの登録情報より。

舞台は今からおよそ2300年前、韓・魏・趙・斉・燕・秦・楚の七国が争っていた中国の戦国時代。主人公の革離(かくり)は、城の防衛だけを専門とする集団「墨家(ぼっか)」から派遣された墨者という設定です。

墨家は記録によれば、実在した思想集団で、「兼愛(分け隔てなく愛する)」「非攻(攻める戦争を否定する)」を掲げたと伝えられます。ただし守りの戦は否定せず、攻められた側に技術者として加勢した——というのが本作の土台です。※墨家の実態・活動については史料が限られ、諸説あります。

あらすじ|一万五千の趙軍に、来たのは一人だけ

趙の大軍が、燕の小城・梁城(りょうじょう)を落とそうと、国境の易水のほとりに軍を構えます。梁城は籠城のため、城邑防衛のエキスパートである墨家へ救援を求めました。ところが約束の日にやって来たのは、革離ただ一人。城の人々は落胆し、あるいは嘲笑します。※あらすじはAmazon商品ページ掲載の内容紹介より。

趙軍到着まで、およそ一か月。革離はその短い時間で城壁を修理し、武器を作り、民を組織していきます。ここが本作の核心で、戦の前にやることが山ほどあるという当たり前を、これでもかと描くのです。私は第1巻を読みながら、「戦争漫画なのに、まるでプロジェクト再建の記録だ」と思わずうなりました。

読みどころ|守る技術は、こんなに面白い

この作品の核|英雄が一騎当千で敵を薙ぎ倒すのではなく、測量し、掘り、積み、配置し、人を動かす。革離の武器は剣ではなく段取りです。攻城側の視点と守城側の視点が交互に描かれるので、「次はここを突いてくるはずだ」という読み合いがそのまま緊張になります。

もうひとつの読みどころは、守り切ったあとに何が起こるかという視点です。城を救った外部の人間は、城の中でどう扱われるのか。功績が大きすぎる者は、平時にはどう見えるのか。ここを避けずに描くから、本作は単なる痛快戦記になりません。

絵は劇画寄りで、汗も泥も血もはっきり描かれます。人の顔がよく歪む漫画です。それが心地よく感じられたら、たぶん最後まで一気に読めます。

結末について(ネタバレ配慮)

結末の具体はここでは書きません。ただ一点だけ言うと、「勝ったかどうか」と「報われたかどうか」は別の問いだ、というのが本作の一貫した態度です。全11巻で完結しているので、途中で放り出される心配はありません。※巻数・完結はAmazon商品ページの登録情報より。

現代の私たちへ|革離がやったことを今の言葉にすると、「守りの仕事」です。守りは、うまくいっているときほど誰にも気づかれません。事故が起きなかった日、在庫が切れなかった日、サーバーが落ちなかった日——その裏には必ず段取りをした人がいます。『墨攻』は、その人たちの物語として読めます。私はこの作品を読んでから、「何も起きなかった」という報告の重さを少し考え直すようになりました。

こんな人におすすめ

  • 『キングダム』で中国の戦国時代に興味を持ち、別の角度から読みたい方
  • 合戦シーンより、兵站・築城・段取りが好きな方
  • 主人公が万能ヒーローでない歴史漫画を探している方
  • 完結済みの全11巻を、一気に読み切りたい方

『墨攻』をお得に読む

全11巻で完結しているので、まずは1巻を読んで劇画の絵柄と相性を確かめ、大丈夫そうなら一気にという進め方が向いています。電子版の第1巻は、本稿執筆時点でAmazonに759円(Kindle版)と表示されていました。※価格・配信状況は変動します。最新の表示をご確認ください。

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よくある質問

『墨攻』は完結していますか?

はい。ビッグコミックス版で全11巻、小学館文庫版で全8巻として刊行され、完結しています。※巻数はAmazon商品ページの登録情報より。

原作の小説とは別物ですか?

原作は酒見賢一さんの同名小説で、漫画版は久保田千太郎さんの脚本を経て森秀樹さんが作画しています。漫画版は原作より長い物語として展開しますので、どちらから入っても大丈夫です。※著者表記はAmazon商品ページより。

史実そのままの話なのでしょうか?

いいえ。墨家という思想集団は記録に残りますが、主人公の革離や梁城の攻防は創作を含む歴史フィクションとして読むのが適切です。※墨家の実態には諸説あります。

『キングダム』が好きなら楽しめますか?

時代はどちらも中国の戦国時代で重なります。ただし『キングダム』が攻める側の高揚なら、『墨攻』は守る側の消耗です。同じ時代の裏面として読むと面白さが増します。

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まとめ

『墨攻』は、紀元前の中国で「攻めない戦い方」を選んだ集団と、そこから送り込まれたたった一人の技術者の全11巻です。剣ではなく段取りで戦う主人公、守り切ったあとに残る問い、そして完結済みという読みやすさ。『キングダム』の熱に少し疲れたときにこそ、静かに効いてきます。まずは1巻から、どうぞ。

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