上田城は、戦国の城としては小ぶりです。天守はなく、残っているのは櫓門と三つの櫓、そして崖のような石垣。それでも徳川の大軍を二度はね返した城だと知って歩くと、見えるものがまるで変わります。私はこの城へ、池波正太郎『真田太平記』を途中まで読んだ状態で行き、帰ってから火坂雅志『真田三代』を読み直しました。順番を間違えた、というのが正直な感想です。

歩く前に、どちらを読んでおくべきか
真田を書いた小説は多いのですが、上田城へ行く前の一冊という観点だと、候補は現実的に二つに絞れます。長編の『真田太平記』(新潮文庫・全十二巻)と、上下二巻で三代を通す『真田三代』(文春文庫)です。同じ題材でも、歩く前の役に立ち方がまったく違いました。
①予習として必要な時間
『真田三代』は上下二巻で、幸綱・昌幸・信繁の三代を一本の線でつなぎます。旅の一週間前に読み始めても間に合う分量です。対して『真田太平記』は十二巻。上田合戦にたどり着くまでに数巻かかるので、出発前日に手に取る本ではありません。私は四巻目の途中で上田へ行き、現地で「まだ読んでいない先の話」を案内板で先に知ってしまいました。
出発まで時間がないなら(上下2巻)
火坂雅志『真田三代』上(1,067円)
火坂雅志『真田三代』下(文庫1,133円)
②上田城そのものの描かれ方
逆に、城の地形を体で理解したいなら『真田太平記』が圧倒的です。尼ヶ淵の崖、城下の道の折れ方、間諜たちが行き来する裏の道まで、歩く速度で書かれています。下の写真の尼ヶ淵側の石垣は、かつて千曲川の分流が直接洗っていた場所で、南から攻めにくい理由がそのまま地形に残っています。

③読み終わるまでの総額
『真田三代』は上1,067円・下1,133円で、二冊で2,200円ほど。『真田太平記』は一巻970円前後が十二巻続くので、通読すれば一万円を超えます。ただし後者は「城の話」ではなく「家の話」なので、値段で比べる相手ではありません。上田へ一度行くための予習なら前者、上田を何度も訪ねたくなる読書がしたいなら後者、という分かれ方をします。
腰を据えて真田の家を読むなら(全12巻)
池波正太郎『真田太平記』(一)天魔の夏(970円)
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城のあとは、北国街道の柳町へ
上田城跡公園から歩いて十数分の柳町は、北国街道の面影が残る通りです。造り酒屋と格子戸の家並みが続き、城を見たあとの頭を冷やすのにちょうどいい距離でした。記録によれば上田は真田氏のあと仙石氏・松平氏が治めており、いま歩ける町並みの多くは戦国ではなく江戸のものです。※諸説あり

上田城が二度持ちこたえたのは、城が強かったからというより、地形と人の配置を最大限に使ったからだと言われます。持っているものが少ないほうが、何をどこに置くかを真剣に考える。真田の父子が家を東西に分けた判断も含めて、資源が足りない側の戦い方として読むと、この城はいまでも十分に実用的な教材だと思います。
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まとめ
上田城へ行く前の一冊は『真田三代』、上田城から帰ったあとの十二巻は『真田太平記』。これが私の出した順番です。予習は短く、深掘りは帰ってから。とくに『真田太平記』は、一度あの石垣を見てから読むと、文章の中の距離感が実寸で立ち上がってきます。
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