司馬遼太郎『翔ぶが如く』全10巻のあらすじと結末|西郷と大久保はなぜ決裂したのか、『世に棲む日日』と読み比べる

小説

本記事はプロモーション(広告)を含みます。

西郷隆盛と大久保利通は、鹿児島の同じ下級武士の町で育った幼なじみでした。その二人が明治十年に敵と味方へ分かれ、片方は城山で死に、もう片方も翌年に東京で殺されます。司馬遼太郎さんの『翔ぶが如く』は、そのあいだの十年ほどを文春文庫で全10巻かけて書いた長編です。幕末の小説をいくつか読んだあとで「維新をやり遂げた人たちは、そのあとどうなったのか」が気になった方に向いています。この記事では、同じ司馬さんの『世に棲む日日』と並べて、どちらから読むと入りやすいかまで比べます。

迷ったら、この1冊から。全10巻と聞くと身構えますが、一巻だけ読めば続けられるかどうかは判断できます。電子版は一巻¥719(2026年9月時点の実測)で、いますぐ読み始められます。

『翔ぶが如く』一巻 Kindle版を見る

『翔ぶが如く』はどんな作品か

『翔ぶが如く』は1970年代に新聞連載された司馬遼太郎さんの長編で、いまは文春文庫の新装版で全10巻にまとまっています。扱うのは明治六年の政変から明治十年の西南戦争までで、『竜馬がゆく』や『燃えよ剣』が描いた幕末の、ちょうど続きにあたる時期です。

主人公は一人ではありません。西郷隆盛と大久保利通という、出身も年齢も近い二人を並べて追いかけます。幕末ものが「古い体制をどう壊すか」の話だとすれば、こちらは「壊したあと、何をどう組み立てるか」の話です。読み終えると、維新という言葉が一度の出来事ではなく十数年がかりの作業だったことが、体の感覚として残ります。

あらすじ(結末の細部には触れません)

征韓論という分かれ道

明治六年、朝鮮との国交をめぐって新政府が割れます。西郷は自分が使節として渡ると主張し、欧米を回って帰国した大久保たちは強く反対しました。結果として西郷は職を辞し、薩摩出身の官吏や軍人が連れ立って東京を去ります。※記録によれば、この対立は単純な外征の是非だけではなく、留守を預かった側と使節団のあいだにたまった不信も絡んでいたとされます。※諸説あり。

国をつくる側と、去っていく側

残った大久保は内務卿として、税・警察・鉄道・工場といった仕組みを次々に据えていきます。いっぽう鹿児島へ帰った西郷のまわりには、行き場を失った士族の子弟が集まり、私学校という組織が地域の実権を持つようになります。中央は制度をつくり、地方には不満がたまる。その差が年ごとに開いていく過程が、淡々と積み上げられます。

そして城山へ

佐賀や熊本で不平士族の反乱が起き、いずれも鎮圧されます。そして明治十年、薩摩が動きました。ここから先は本編で読んでいただきたいので、結末の細部には触れません。ただ、この長編が最後まで「戦の物語」に傾かないことだけは書いておきます。

読みどころ

西郷は最後まで「わからない人」のまま置かれている

私が読み始めて最初にとまどったのが、この点でした。ふつう主人公は内面が書かれるものですが、西郷については周囲の証言や手紙が並ぶだけで、当人が何を考えていたかは最後まで確定されません。三巻あたりで「これは作者が書けなかったのではなく、意図してそう置いているのだ」と気づいてから、急に読みやすくなりました。人物を英雄に仕上げない書き方なので、読者は自分で判断を引き受けることになります。

いちばん付箋が増えたのは、大久保の事務仕事だった

正直に書くと、私が全10巻でいちばん付箋を貼ったのは戦場ではなく、大久保が予算や人事を動かしている場面でした。嫌われ役を引き受けて制度を据えていく描写は地味ですが、いま自分が勤め先で見ている光景とあまりに似ています。派手な場面を期待して読み始めると肩透かしを食うかもしれませんが、そこを面白がれるかどうかが、この長編と相性が合うかの分かれ目だと思います。

『世に棲む日日』と読み比べる

同じ司馬さんの作品で比べるなら、長州の吉田松陰と高杉晋作を描いた『世に棲む日日』がちょうど対になります。二作は時期も長さも読後感も違うので、先に違いを並べておきます。

二作の違い

扱う時期:『世に棲む日日』は幕末(維新の前)、『翔ぶが如く』は明治六年から十年(維新の後)。

長さ:『世に棲む日日』は全4巻、『翔ぶが如く』は全10巻。所要時間は倍以上ちがいます。

主役の描き方:前者は松陰と晋作という「燃える人」を内側から、後者は西郷と大久保を外側から描きます。

読後感:前者は熱が残り、後者は疲れと重さが残ります。どちらが上という話ではなく、読みたい気分で選ぶものです。

どちらから読むか|目的別の選び方

幕末から時代順に追いたい方は『世に棲む日日』が先です。全4巻なので、司馬さんの文体が自分に合うかを確かめる用途にも向きます。

明治という国がどう組み立てられたかを知りたい方は、遠回りせず『翔ぶが如く』から入って構いません。幕末の知識がなくても本文が補ってくれます。

長編に不安がある方は、まず一巻だけ買うのがおすすめです。私の場合、続きを買うかどうかは二巻の途中で決まりました。司馬作品をどの順で読むか全体を見たい方は、司馬遼太郎の読む順番ガイドも合わせてどうぞ。

現代の私たちへ

この長編が繰り返し書くのは、組織が立ち上がったあとに「つくった人」と「回す人」の役割が分かれてしまう、という話です。壊すときに先頭に立った人ほど、整った制度の中では居場所を失いやすい。会社でも学校でも見覚えのある景色で、だからこそ百五十年前の話が他人事に読めません。誰が正しかったかを決めずに閉じる書き方も、いまの私たちが引き受けるべき宿題として残ります。

いくらで読めるか(2026年9月時点の実測)

電子版は一巻¥719、十巻¥740でした。単純に十冊ぶんを足すと七千円台になります。紙の文春文庫は新装版の一巻が¥792、十巻が¥748で、こちらも十冊で八千円前後です。差は大きくないので、値段より「どこで読むか」で決めたほうが後悔がありません。長編は持ち歩く回数が多いぶん、電子のほうが最後まで走りきりやすいというのが私の実感です。価格は変わることがありますので、最新の表示はリンク先でご確認ください。

『翔ぶが如く』一巻 Kindle版を見る
『翔ぶが如く』新装版 一巻 文庫を見る
楽天ブックスで『翔ぶが如く』一巻を見る
『世に棲む日日』新装版 一巻 文庫を見る

読み放題や耳で聴く本を先に試したい方は、初回無料の期間を使う手もあります。対象の作品は入れ替わるので、その都度ご確認ください。

Kindle Unlimitedを初回無料で試す

Audibleを初回無料で聴く

あわせて読みたい

📚 関連記事:死んでから順番が入れ替わった人の歴史まんが・小説4選南朝の若い将・風狂の禅僧・名を奪われた技術者・賊軍の元勲、同時代には正しく数えられなかった4作›

コメント

タイトルとURLをコピーしました