ヴェネツィアは、海の上に千年つづいた共和国でした。塩野七生さんの『海の都の物語』は、その一千年を新潮文庫で全6巻かけて書いた歴史ノンフィクションです。同じ著者の『ローマ人の物語』ほど巻数が多くないので、塩野作品の一冊目にも向いています。ただ、いざ買おうとすると文庫のバラ売り・全6巻セット・電子版の三つが並んでいて、合計金額が二倍ちかく違います。この記事では2026年9月時点の実売価格を一冊ずつ測り、どの買い方がいくらになるのかを分解します。
迷ったら、この1冊から。全6巻と聞くと身構えますが、一巻だけ読めば最後まで行けるかどうかは判断できます。新潮文庫の一巻は¥605(2026年9月時点の実測)でした。
『海の都の物語』はどんな本か
扱うのは、干潟の避難民の集落から始まったヴェネツィアが、地中海の交易国家として千年を生きのび、ナポレオンの進軍で幕を下ろすまでです。小説ではなく歴史ノンフィクションですが、共和国が節目ごとに何を選び、何を捨てたのかを人の判断として追う書き方なので、読み味はかなり物語に近いところがあります。
私が最初に驚いたのは、この国が英雄をほとんど作らなかったことでした。元首を選んでも権限を細かく削り、目立つ個人が出てくると制度のほうで抑えにかかる。派手さはないのに、その地味さこそが千年の正体だったと分かってくると、ページをめくる手が止まらなくなります。※解釈には諸説あり、記録によれば、という留保が必要な箇所も本文中で著者自身が断っています。
全6巻はどんな順に進むのか
おおむね時代順です。前半は都市の成り立ちと、交易で食べていくための仕組みづくり。中盤は十字軍や東地中海をめぐる勢力争いのなかで、ヴェネツィアが商売と戦争をどう両立させたか。後半はオスマン帝国の台頭と新航路の登場で商売の土俵そのものが変わり、共和国が長い下り坂をどう歩いたかに移ります。
結末は史実どおり共和国の消滅ですが、そこに至る過程のほうが本題です。あらすじを先に知っていても読む価値が落ちない種類の本なので、ネタバレを恐れずに一巻から順に進めて大丈夫です。
いくらで読めるか(2026年9月時点の実測)
買い方は三通りあります。すべて同じ日に商品ページを開いて価格を拾いました。
- 新潮文庫を1冊ずつ6冊=¥605・¥506・¥506・¥572・¥572・¥572で合計¥3,333。
- 電子版(塩野七生ルネサンス著作集4・5の上下2冊)=¥1,455+¥1,544で合計¥2,999。文庫6冊より¥334安く、買ったその場で読み始められます。
- 文庫の全6巻セット商品=¥6,850。1冊ずつ買った合計の約2.06倍です。
いちばん注意したいのが三つ目です。「全6巻セット」という見出しは、まとめ買いで安くなる合図のように見えますが、この本にかぎっては逆でした。ばらばらに6冊カートに入れるほうが¥3,517も安く済みます。セット商品の価格は出品者ごとに動くので、押す前に1冊ずつの価格と足し算で比べる癖をつけておくと損をしません。
なお、新潮文庫版に電子版は用意されていません。電子で読みたい場合は上下2冊にまとまった著作集版を選ぶことになります。内容は同じでも、巻の切れ目と持ち歩きやすさが変わる点だけ覚えておいてください。価格は変わることがありますので、最新の表示はリンク先でご確認ください。
どこから読むと入りやすいか
結論から言うと、1巻から順でかまいません。この本は謎解きではないので、途中から入ると「なぜこの国がこんな決め方をするのか」という一番おいしい部分が分からなくなります。ただ、歴史の本に慣れていない方は、1巻を読み終えた時点でいったん止めて、地図を一枚だけ手元に置くことをおすすめします。アドリア海の奥に町があり、そこから東地中海へ線が伸びている——この位置関係が頭に入るだけで、2巻以降の速度がまるで変わります。
私は2巻の途中で一度つまずき、世界史の地図帳を開き直してから読み返しました。そこから先は止まらず、6巻まで二週間ほどで読み切っています。つまずくのは理解力の問題ではなく、たいてい地理の問題です。
どの買い方を選ぶか
通勤や出張で読み進めたい方は電子版が向いています。¥2,999で上下2冊、端末ひとつで全部持ち歩けるので、長い本にありがちな「3巻でカバンから消える」事故が起きません。私自身、この本は電子で読み切ってから文庫を買い足しました。
線を引いたり付箋を貼ったりしながら読みたい方、地図や家系図を行き来したい方は文庫6冊です。合計¥3,333で、差額は¥334。ここは値段ではなく読み方で決めていい幅だと思います。
現代の私たちへ。ヴェネツィアが千年もったのは、儲かっているときに「この仕組みは何年もつか」を考え続けたからでした。うまくいっている事業ほど、判断の権限が一人に寄っていないか、稼ぎ頭が一本に偏っていないかを点検する。この本の面白さは、そのまま今の組織の話として読めるところにあります。
こんな人におすすめ
世界史の教科書でヴェネツィアの名前だけ覚えている方、『ローマ人の物語』全15巻はさすがに長いと感じている方、そして国や会社が長く続く条件に関心がある方。逆に、合戦や英雄の活躍を追いたい方には少し静かに感じられるかもしれません。
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読み放題や耳で聴く本を先に試したい方は、初回無料の期間を使う手もあります。対象の作品は入れ替わるので、その都度ご確認ください。
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