『三河物語』はどの入口から読む?原典の現代語訳・安彦良和のまんが・宮城谷昌光の小説を比べる|値段とあらすじ

三河物語——原典の現代語訳・まんが・小説の三つの入口を比べる 小説

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徳川家康に仕えた旗本・大久保彦左衛門が、自分の子や孫に向けて書き残した家の記録——それが『三河物語』です。戦国の一次史料でありながら、書き手の愚痴や自慢がそのまま残っている、妙に人間くさい本でもあります。

ただ、いざ読もうとすると入口が三つあって迷います。原典の現代語訳、まんが、そして小説。どれも「三河物語」と名乗っているのに中身の手触りがまるで違うので、ここでは三つを並べて、値段と読み心地の両方から比べてみます。

『三河物語』とは——身内に向けて書かれたので、本音が残った

大久保彦左衛門忠教(ただたか)が江戸時代のはじめ、一六二二年ごろに書いたとされます。もともと世に出すつもりがなく、大久保家の子孫だけに読ませる目的だったため、公式の記録なら削られるはずの不満や恨み言が削られないまま残りました。

私が最初に通しで読んだとき、いちばん驚いたのはそこでした。家康を持ち上げる場面のすぐ隣に、「我が家はこれだけ尽くしたのに報われていない」という愚痴が同じ熱量で書いてある。歴史の教科書で見る戦国とは温度がまるで違って、読み終えたあと少し呆然としたのを覚えています。

三つの入口を比べる

① 原典の現代語訳(ちくま学芸文庫)

大久保彦左衛門の文章そのものを、小林賢章さんの訳で読む一冊です。三つのなかで唯一、彦左衛門の語り口に直接ふれられます。逆に言うと、話は時系列どおりに整理されておらず、身内にしか分からない人名も出てくるので、戦国の流れをある程度知っている人向けです。

② まんが版(安彦良和)

中公文庫「マンガ日本の古典」の一冊で、作画は安彦良和さん。機動戦士の作画で知られる方が三河武士を描いているというだけで手に取る価値がありますが、実際に読むと絵の力で人物の関係がすっと入ってきます。三つのなかでいちばん短時間で全体像をつかめる入口です。

③ 小説『新三河物語』(宮城谷昌光)

宮城谷昌光さんが大久保一族を主役に据えて書き下ろした全三巻の長編です。原典を下敷きにしつつ、現代の小説として読める形に整理されています。通読の満足度はいちばん高いぶん、三冊ぶんの時間とお金がかかります。

値段でくらべる(すべて調査時点の実売価格)

入口冊数文庫電子
① 原典の現代語訳1冊1,430円1,397円
② まんが版1冊858円—
③ 小説『新三河物語』3冊2,310円2,079円

小説の内訳は、文庫が上781円・中880円・下649円、電子が上703円・中792円・下584円です。まんが版には電子版がありません。価格は変動しますので、最終的な金額はリンク先でご確認ください。

こうして並べると、いちばん安く『三河物語』の中身に触れられるのはまんが版の858円で、原典そのものを読んでも1,430円。小説だけが三冊ぶんで二千円台に乗ります。差額は千円ちょっとですから、値段で決めるより目的で決めたほうがよさそうです。

目的別に、どれを選ぶか

戦国の一次史料に触れてみたい方は①です。彦左衛門の偏りごと読むのが『三河物語』の醍醐味なので、整理された文章では味わえません。

まず全体像をつかみたい方は②。一冊で人物関係と合戦の流れが入りますし、ここで地図ができてから①へ進むと格段に読みやすくなります。私も人にすすめるときはこの順番にしています。

物語として腰を据えて読みたい方は③。大久保一族の視点で徳川の草創期を通しで追えるので、読後に残るものがいちばん大きい選択です。

現代の私たちへ
『三河物語』が四百年後も読まれているのは、彦左衛門が「評価されなかった側」の記録を残したからです。手柄が正しく伝わらないという不満は、そのまま現代の職場にもあります。記録を残した人間の言い分だけが後世に届く——この本は、そのことの怖さと大切さを同時に教えてくれます。

お得に読む

まず一冊で全体像をつかむなら(まんが版)
まんが版(中公文庫・858円)
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原典の語り口を味わうなら
現代語訳 三河物語(ちくま学芸文庫・1,430円)
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物語として通読するなら(全三巻)
新三河物語 上(文庫・781円)
新三河物語 中(電子・792円)
新三河物語 下(電子・584円)

なお読み放題や聴き放題の対象作品は入れ替わりがありますので、対象かどうかはその都度ご確認ください。

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まとめ

『三河物語』は入口を選べる本です。最短で全体像をつかむなら安彦良和さんのまんが版、彦左衛門の肉声を聞くなら原典の現代語訳、物語として味わうなら宮城谷昌光さんの小説。値段の差は千円ほどなので、予算ではなく「今日はどこまで踏み込みたいか」で選ぶのが正解だと思います。

個人的には、まんが版で地図をつくってから原典へ、という順番がいちばん失敗が少ないと感じています。

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