平将門は、関東で兵を挙げて「新皇」と名乗り、朝廷から討たれた人物です。神田明神に祀られ、首塚の移転が今も語られるほど強い印象を残しているのに、いざ本で読もうとすると、どこから入ればいいのか分かりにくい人でもあります。
入口は大きく三つあります。海音寺潮五郎さんの長編小説、吉川英治さんの一冊物、そして史実を整理した新書。同じ将門を扱っているのに、読み終わったときに残るものがまるで違うので、ここでは三つを並べて、値段と読み心地の両方から比べます。
平将門とは——「新皇」を名乗り、そして討たれた
平将門は桓武天皇の血を引く関東の武士で、一族との私闘から始まった争いが、やがて国司との対立へ広がりました。九三九年に常陸・下野・上野の国府を次々と落とし、自ら新皇と称します。しかし翌年、藤原秀郷と平貞盛に討たれ、その支配はごく短いあいだで終わりました。
同じころ瀬戸内では藤原純友が乱を起こしており、東西で同時に朝廷へ反旗が上がった形になります。この二つをまとめて承平天慶の乱と呼びます。※年代や動機については諸説あり、記録によれば、とされる部分が多く残ります。
三つの入口を比べる
① 海音寺潮五郎『海と風と虹と』全三巻——いちばん深く沈める
将門と純友の二人を並走させて描いた長編です。一九七六年の大河ドラマの原作にもなりました。※ドラマの題名は『風と雲と虹と』で、小説の題名とは一字ちがいます。私は最初にこの題名の差で取り違え、書店で別の本を探して空振りしたことがあります。
読み心地は、ゆっくり水位が上がっていく感じです。将門が最初から反乱者だったわけではなく、押されて押されて引き返せなくなる過程が丁寧に積まれているので、新皇を名乗る場面まで来ると、その決断が悲鳴のように読めます。三巻を読み終えたあと、しばらく本を閉じたまま座っていました。
② 吉川英治『平の将門』——一冊で通せる
吉川英治さんらしく、語り口が軽くて進みが速い一冊物です。全三巻は重いけれど将門の一生は追いたい、という人にちょうど合います。電子版が九十九円なので、合わなかったときの損も小さい。まず将門という人物の形をつかむ用途なら、ここから入るのが一番失敗しません。
③ 『平将門と天慶の乱』講談社現代新書——史実を先に整える
小説ではなく研究の側からの整理です。将門がなぜ新皇を名乗れたのか、当時の関東で国家の権威がどこまで届いていたのかを、史料に沿って説明してくれます。小説を読んだあとに読むと、物語のどこが創作でどこが記録なのかが線引きできて、二度目の小説がまるで別の本になります。
値段はこうなる(実測)
いちばん大きな差は、じつは作品の差ではなく紙と電子の差でした。
『海と風と虹と』の電子版は上が五百九十四円、中と下が各七百七十円で、全三巻あわせて二千百三十四円です。いっぽう紙は角川文庫版が絶版で、上巻一冊が古書で七千八百七十七円。楽天ブックスの時代小説文庫版も現在は取り扱いが終わっていました。つまり紙で揃えるのは、金額というより在庫の問題で現実的ではありません。
そして決め手がもうひとつあります。『海と風と虹と』は全三巻とも読み放題の対象でした。対象は入れ替わりますが、当てはまっている今なら、三巻通読の実費はゼロになります。吉川英治版は文庫が千十二円・電子が九十九円、新書は千十二円・電子が九百五十七円です。
こんな人におすすめ
将門という人物をじっくり味わいたい人、関東武士の始まりに興味がある人は①へ。通勤のあいだに一気に読み切りたい人は②へ。大河や漫画で将門を知って「本当はどうだったのか」が気になった人は③から入ると、そのあとの小説が何倍も面白くなります。
現代の私たちへ
将門が新皇を名乗ったのは、都から遠い場所で「ここのことは、ここで決める」と言おうとしたからでした。中央の基準が実情に合わないとき、現場が独自に動き出すのは今の組織でも起こります。将門の失敗は志の中身ではなく、味方を広げる前に旗を立ててしまった順番にありました。旗を立てる前に誰と立つかを決めておく——千年前の関東が残した教訓は、そこだと思います。
お得に読む
まず一冊で将門の一生を追うなら
平の将門(吉川英治歴史時代文庫・文庫1,012円/電子99円)
楽天ブックスで平の将門を見る
史実を先に整えるなら
平将門と天慶の乱(講談社現代新書・1,012円/電子957円)
楽天ブックスで新書版を見る
長編でじっくり読むなら(全三巻・電子計2,134円)
海と風と虹と 上(電子594円)
海と風と虹と 中(電子770円)
海と風と虹と 下(電子770円)
実費を抑えて三巻とも読むなら
Kindle Unlimited の無料体験を見る
Audible の初回無料を見る(長編は耳で進む)
なお読み放題や聴き放題の対象作品は入れ替わりがありますので、対象かどうかはその都度ご確認ください。
まとめ
平将門は入口を選べる題材です。深く沈むなら海音寺潮五郎さんの全三巻、一冊で通すなら吉川英治さん、史実から入るなら講談社現代新書。金額の差はほとんど紙と電子の差で、作品の優劣ではありません。
私の順番としては、吉川英治版で将門の形をつかみ、新書で記録の線を引き、最後に全三巻へ沈む流れがいちばん失敗が少なかったです。三巻が読み放題に入っているうちに始めるのが、いちばん安く深いところまで行けます。
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