松井優征『逃げ上手の若君』は既刊何巻?あらすじ・登場人物と読みどころを徹底解説【アニメ第二期7月17日開始】

松井優征『逃げ上手の若君』紹介記事のアイキャッチ 漫画

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主人公は、戦って勝つ英雄ではありません。全力で、みっともなく、誰よりも上手に「逃げる」少年です——松井優征さんの『逃げ上手の若君』は、鎌倉幕府の滅亡ですべてを失った少年・北条時行(ほうじょう ときゆき)を主人公に据えた、南北朝時代の歴史まんがです。私はこの設定を知ったとき、正直「逃げる主人公で少年漫画が成立するのか」と半信半疑でした。ところが読み始めて数十ページで、その疑いはきれいに消えました。逃げるという行為が、これほど爽快で、これほど戦略的で、これほど胸を打つものだとは思っていなかったからです。

『逃げ上手の若君』とは——“逃げる才能”を武器にした少年の物語

この作品の核
1333年、鎌倉幕府は滅亡します。北条一族が滅び去るなか、幕府最後の得宗・北条高時の遺児である少年・時行だけが生き延びた——史実のわずかな記述を出発点に、彼が信濃の諏訪頼重(すわ よりしげ)に匿われ、やがて足利尊氏へ立ち向かうまでを描く歴史活劇です。集英社『週刊少年ジャンプ』で2021年8号から2026年12号まで連載され、約5年の連載に幕を下ろしました。作者は『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』の松井優征さん。エンタメの名手が初めて歴史ものに挑んだ作品として、連載開始時から大きな注目を集めました。

既刊何巻?——2026年7月時点で既刊25巻、最終27巻で完結予定

『逃げ上手の若君』の単行本(ジャンプコミックス)は、2026年7月時点で既刊25巻です。最新の25巻は2026年5月1日に発売されました。続く26巻は2026年8月4日、そして最終巻となる27巻は2026年10月2日の発売が予定されています。本編の連載自体はすでに完結しているため、「途中で止まってしまうのでは」という心配なく読み進められるのが、いま読み始める大きな利点です。

私は連載を追いながら読んでいた口ですが、完結が見えたいま、あらためて1巻から読み返しています。結末を知ったうえで序盤を読むと、何気ない台詞の裏に張られていた伏線がいくつも浮かび上がってきて、まったく別の作品のように感じられました。まとめて揃えたい方には既刊セットも用意されています。

あらすじ——すべてを失った少年が、逃げることで生き延びる

1333年、新田義貞の軍勢によって鎌倉は攻め落とされ、北条一族は滅亡します。当時まだ幼い少年だった北条時行は、あらゆるものを一夜にして失いました。父も、家も、一族も、そして自分が生きるはずだった未来もです。

絶望のなかで彼を拾ったのが、信濃国の諏訪頼重でした。頼重は時行のなかに、常人にはない才能を見出します。それは剣の腕でも兵法の知識でもなく、「逃げる」才能——危険を察知し、身をかわし、生き延びる能力でした。「逃げるが勝ち」ではなく「逃げるが才」。頼重のもとで時行は、逃げるという行為を武器へと磨き上げ、やがて鎌倉を奪い返すべく立ち上がっていきます。立ちはだかるのは、時代の勝者となっていく足利尊氏です。

※物語の中盤以降の展開は、これから読む方の楽しみのためにここでは触れません。

主な登場人物

北条時行/本作の主人公。鎌倉幕府の遺児。逃げの才を持つ少年で、無邪気さと残酷さを併せ持ちます。
諏訪頼重/信濃の諏訪大社の大祝(おおほうり)。未来を見通す力を持つとされ、時行を匿い導く存在です。
足利尊氏/時行の宿敵にして、時代の勝者となっていく武将。本作では底の見えない不気味さを湛えた人物として描かれます。
時行の郎党たち/弧次郎、亜也子、吹雪ら、時行のもとに集う個性豊かな仲間たち。彼らとのやりとりが、苛烈な戦のなかに息継ぎの時間を作ってくれます。

読みどころ——“逃げ”という発明、そして落差

ひとつめは、「逃げる」を主題に据えた発想そのものです。少年漫画の王道は「戦って勝つ」ですが、本作は真正面からその逆を行きます。しかも逃げは消極的な選択ではなく、相手の攻撃をすべて見切ったうえで成立する高度な技術として描かれる。逃げるシーンがバトルシーンより手に汗握るという、なかなか他では味わえない読み味です。

ふたつめは、ギャグと苛烈さの落差。松井優征さんらしい軽快なギャグで笑わせておきながら、次のページで戦の非情さを突きつけてくる。この振れ幅の大きさが、南北朝という混沌とした時代の空気そのものと重なって感じられます。

みっつめは、史料の空白を物語に変えた点です。北条時行は、教科書ではほとんど触れられない人物で、残された記録もごくわずかです。だからこそ描ける自由がある——本作はその余白を、大胆な想像力で埋めていきます。

史実としての北条時行(※諸説あり)

記録によれば、北条時行は鎌倉幕府滅亡後に信濃へ逃れ、1335年に挙兵して鎌倉を一時的に奪還したとされます。これがいわゆる中先代の乱です。ただし鎌倉を保っていられたのはごく短い期間で、足利尊氏の反撃によって再び追われることになりました。その後の彼は南朝方に属して戦い続け、1353年に捕らえられて処刑されたと伝えられています。

もっとも、時行の人物像を伝える史料は『太平記』などに限られ、その実像には不明な点が多く残ります。本作で描かれる性格や心情、逃げの才能といった設定は、あくまで作者の創作として楽しむのが正しい読み方です。歴史まんがを入り口に史実へ関心が向いたなら、それこそが最良の読書体験だと私は思っています。

アニメ第二期は2026年7月17日スタート

テレビアニメ第二期が、2026年7月17日(金)よりフジテレビ系「ノイタミナ」枠で放送開始となります。放送は毎週金曜23時30分から。あわせてPrime Videoでの見放題配信も予定されています。第1期は2024年7月から9月にかけて全12話が放送されました。原作の該当巻を読んでから映像で観ると、逃げの動きが実際にどう表現されるのかが分かって、二倍楽しめます。

こんな人におすすめ

・南北朝時代という、教科書では駆け足で終わる時代を物語で味わいたい方
・王道とは違う切り口の少年漫画を探している方
・『暗殺教室』『魔人探偵脳噛ネウロ』で松井優征さんの作劇が好きになった方
・鎌倉幕府の滅亡から室町幕府の成立までを、人物の側から追いたい方

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まずは1巻から。逃げの爽快感は、序盤の数話だけでもはっきり伝わってきます。

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現代の私たちへ
私たちは「逃げる」という言葉に、どこか後ろめたさを結びつけて生きています。逃げずに立ち向かうことが立派で、逃げることは弱さだと。けれど時行が教えてくれるのは、逃げることは生き延びるための技術であり、生き延びた者にしか次の一手はない、という単純な事実です。撤退は敗北ではなく、再起のための時間稼ぎになりうる。どうにもならない場所で消耗している人にとって、この物語はきっと、思いがけないかたちで背中を押してくれるはずです。

よくある質問

Q. 全部で何巻になりますか?
A. 最終巻は27巻の予定です(2026年10月2日発売予定)。2026年7月時点の既刊は25巻です。

Q. 歴史の知識がなくても読めますか?
A. 読めます。南北朝時代の前提知識は作中で丁寧に補足されるので、鎌倉幕府が滅びたところから物語に入っていけます。

Q. アニメから入っても大丈夫ですか?
A. 問題ありません。第二期は2026年7月17日から放送されます。原作は先の展開まで読めるので、アニメで気に入ったら単行本へ、という順番もおすすめです。

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まとめ

『逃げ上手の若君』は、歴史の敗者として消えていったはずの少年に光を当て、「逃げる」という一点から南北朝という時代を描き直した作品です。既刊25巻、最終27巻で完結予定。アニメ第二期の開幕という絶好のタイミングでもあります。教科書の数行で終わってしまう人物が、これほど生き生きと動き出すのか——歴史まんがの醍醐味が詰まった一作です。

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