南北朝・室町を漫画と歴史小説で読む完全ガイド|まんがで人を覚え、本で構図をつかむ時代順の併読ペア

漫画

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南北朝から室町は、日本史のなかでも「読みはじめる場所が分からない」時代の代表格だと思います。天皇が二人いて、将軍の力が強かったり弱かったり、最後は誰も止められない大乱になる。教科書の順番どおりに読むと、人名の数だけで止まります。

そこでこのガイドは、時代順に並べるのではなく「まんが一本+本一本」の併読ペアで組みました。まんがで人を覚えてから本で構図をつかむ、という順番です。前後の時代は鎌倉時代を漫画と歴史小説で学ぶ完全ガイドと江戸時代を漫画と歴史小説で学ぶ完全ガイドにまとめてあります。

迷ったら、この一冊から

松井優征『逃げ上手の若君』第一巻から入るのがいちばん軽い入口です。北条時行という「負けた側の子ども」の目線で南北朝が始まるので、勢力図を覚える前に物語へ入れます。

南北朝・室町とは、どこからどこまでか

おおまかには、鎌倉幕府が滅びた1333年から、織田信長が足利義昭を京都から追った1573年までの約二百四十年です。前半の六十年ほどが南北朝、そのあと将軍と守護大名がせめぎ合う室町、後半に応仁の乱を経て戦国へなだれ込みます。

この時代が読みにくい理由は三つあります。ひとつ、朝廷が二つに割れて正統がはっきりしない。ふたつ、主役が将軍から守護大名、さらに地侍へと下へ下へ移っていく。みっつ、有名な合戦が少なく、話が制度と権力の綱引きで進む。だから合戦を追う読み方だと途中で手が止まります。

併読の考え方=まんがで人を覚え、本で構図をつかむ

やり方は単純です。まず、まんがを一冊読んで登場人物の顔と立場を頭に入れる。そのうえで同じ場面を扱った本を開くと、まんがで飛ばされていた「なぜそうなったのか」が埋まります。逆順にすると、人名が記号のまま増えていくので途中で落ちます。

この読み方が効くのは、この時代の資料が立場によって書きぶりが変わるからでもあります。同じ人物が忠臣にも逆賊にも書かれる。記録によれば、そのふり幅は江戸期の評価と近代の評価でも大きく動いています。まんがの解釈をひとつ持っておくと、本の書きぶりの違いに気づけます。

時代順の併読ペア

① 南北朝のはじまり(1333年〜)

まんが=『逃げ上手の若君』第一巻。鎌倉幕府が滅びた日に生き延びた北条時行が主人公で、勝った側ではなく逃げた側から南北朝を見ます。作品の全体像は『逃げ上手の若君』は既刊何巻?にまとめました。

本=吉川英治『私本太平記(一)』。足利尊氏を主役に据えた長編で、まんがとは真逆の立ち位置から同じ十年を描きます。二つを並べると、尊氏が「裏切り者」にも「時代を終わらせた人」にも見える理由が分かります。紙で試すなら楽天ブックスの『逃げ上手の若君』第一巻が入口として軽い。

② 室町幕府がいちばん強かった時期(1368年〜)

足利義満が南北朝を合一し、明との貿易を始めた時期です。ここは物語作品が少ない代わりに、文化史から入ると景色が変わります。京都に残る建築や庭を見に行くのが早く、東福寺 歴史さんぽで扱った通天橋や八相の庭は、この時代の禅と武家がどう結びついたかを実物で見せてくれます。宗派の流れは日本の仏教史を漫画と本で読む完全ガイドが通史ハブになります。

③ 応仁の乱(1467年〜)

まんが=ゆうきまさみ『新九郎、奔る!』第一巻。のちの北条早雲を、まだ何者でもない伊勢新九郎として描きます。京都の屋敷のなかで大乱が始まるので、戦場ではなく生活の側から乱を見られるのが強みです。詳しくは『新九郎、奔る!』は既刊23巻に書きました。

本=呉座勇一『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』中公新書。畠山家の相続争いから説き起こし、なぜ十一年も終わらなかったのかを筋で追える一冊です。楽天ブックスの同書も同じ価格帯でした。まんがで人を覚えたあとに読むと、固有名詞の壁がかなり低くなります。

④ 戦国へつながる場所

応仁の乱のあと、主役は将軍から地方の実力者へ移ります。ここから先は既存の記事群につながるので、自分では選べない立場を背負った人の歴史まんが・小説5選と合戦より地味な実務が時代を動かした歴史まんが5選を橋にすると、人物単位で入り直せます。

どこから入るか、三つのタイプ別

人から入りたい人は①の『逃げ上手の若君』。主人公が子どもなので、時代の説明が自然に入ります。制度や理由から入りたい人は③の『応仁の乱』を先に読んで、そのあとまんがへ戻ると復習になります。長編を一気に読みたい人は『私本太平記』で、文庫は全八巻です。

総額を先に知っておきたい場合は長編の歴史まんが・歴史小説は全巻そろえるといくら?に一覧があります。読み放題やレンタルを混ぜる組み方は読み放題とレンタルの併用がいちばん安い理由にまとめました。

現代の私たちへ

この時代のいちばんの読みどころは、誰も全体を握っていないことだと思います。将軍にも天皇にも守護にも、それぞれ届く範囲があって、その外側は動かせない。だから合意が作れず、争いが十年単位で終わらない。決定権が分散した組織で何が起きるのかを、二百四十年ぶん見せてくれる時代です。強いリーダーの話より、こちらのほうが実務には効きました。

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