同じ島に、金を掘り当てた者と、島へ流された者が重なって暮らしていました。佐渡は、それが観光地としてではなく地形として残っている、めずらしい場所です。
この記事は「佐渡へ行く前に3冊読んでみて、実際どれが効いたか」を正直に書いたものです。買う前に、自分がどのタイプの読者か見分けられるようにしました。

佐渡はどんな島か|金と流人が同じ地図の上にある
新潟県の沖に浮かぶ佐渡島には、大きく2つの歴史が重なっています。ひとつは相川の金銀山。江戸時代には幕府の直轄領(天領)として佐渡奉行所が置かれ、産出した金銀が幕府財政を支えました。2024年には「佐渡島の金山」が世界文化遺産に登録されています。
もうひとつは流刑の島としての顔です。記録によれば、承久の乱ののちに順徳上皇が、鎌倉時代には日蓮が、室町期には世阿弥が佐渡へ流されています。都から最も遠い場所として選ばれた島が、のちに国の金庫になった。この落差が、佐渡を歩くときのいちばんの面白さです(配流の事情や年次には諸説あります)。
読む前に抱えていた不安
正直に言うと、行く前に警戒していたことが3つありました。①郷土史の本は地名と人名の羅列で眠くなるのではないか ②世界遺産登録の便乗本を買ってしまうのではないか ③小説から入ると史実と物語の区別がつかなくなるのではないか。
結果から言えば、3冊とも役割がまったく違い、順番を間違えると1冊目で挫折します。以下、実際に読んだ順に書きます。
実際に読んでどうだったか|3冊の読み比べ
1冊目|磯部欣三『佐渡金山』(中公文庫・約393ページ)
いきなりこれから入ったのが失敗でした。金山の開発史を正面から扱った本格的な通史で、鉱山技術・労働・支配のしくみまで踏み込みます。読み終えたときの満足度は3冊でいちばん高い一方、予備知識ゼロの状態で最初に開くと、序盤の地名で確実に止まります。「佐渡がすでに好きな人が2冊目に読む本」という位置づけが正しいと思いました。

2冊目|磯部欣三『佐渡歴史散歩 金山と流人の光と影』(約197ページ)
結論から言うと、最初に読むならこれです。同じ著者が、歩く順路に沿って金山と流人の両方を並べてくれるので、「いま自分はどのへんの話を読んでいるのか」が地図として頭に入ります。200ページ弱と薄く、往きの船やバスで読み切れる分量なのも実用的でした。副題どおり、光(金)と影(流人)を同じ本で扱っているのが、この島にはいちばん合っています。

3冊目|松本清張『佐渡流人行』(新潮文庫・約381ページ)
歩いたあとで効いたのがこれでした。清張の時代小説短編集で、島に流された側から佐渡を見る視点が入ります。奉行所の復元建物を見たあとに読むと、同じ建物がまったく違って見えました。史実の解説ではなく物語なので、先に読むと事実と創作が混ざります。順序としては、必ず歩いたあと、または通史のあとに。
合わなかった点も書いておきます
- 3冊とも写真は少なめです。北沢浮遊選鉱場のような近代の遺構を目当てに行くなら、写真は現地の資料館か公式サイトで補ったほうが早いです。
- 世界遺産登録以降の話は、3冊では追いきれません。登録の経緯や現在の整備状況は別途調べる必要があります。
- 『佐渡金山』は電子版の有無や在庫が時期で変わります。紙で確実に読みたい人は早めに確保しておくのが無難です。
読む→歩く→また読む|佐渡での順路の組み方
相川に着いたら、まず道遊の割戸を遠景で見てから坑道へ入ると、規模の理解が段違いになります。人力で山を V 字に割った跡が、そのまま稜線として残っているからです。そのあとに北沢浮遊選鉱場跡へ回ると、江戸の手掘りから近代の機械選鉱までが1日で地続きになります。
最後に佐渡奉行所へ寄って、帰りの船で『佐渡流人行』を開く。これが、わたしの試した中でいちばん残る順番でした。
現代の私たちへ
佐渡は「豊かな島」と「罰として送られる島」を同時に引き受けてきました。ひとつの場所に、まったく違う意味を同時に持たせてしまうのは、人が土地に対してよくやることです。金山跡を歩きながら流人の話を思い出すと、いま自分が住んでいる土地の見え方も少し変わります。
移動中に0円で仕込むなら
船やバスでの移動時間は、読書と聴く読書の相性がとてもよい時間です。初回無料の期間中に佐渡・江戸まわりを数冊まとめて当たり、残す1冊だけ紙で買うのがいちばん無駄が出ません。対象作品は入れ替わるので、リンク先で対象マークを確認してください。
結局、あなたはどの1冊から始めるか
- これから行く/佐渡は初めて → 『佐渡歴史散歩』。薄くて、歩く順に並んでいます。
- 金山の仕組みまで知りたい → 『佐渡金山』。ただし2冊目に回すこと。
- 行ったあとの余韻を伸ばしたい → 『佐渡流人行』。帰りの船で開くのが最適です。
この島の前後に読むなら
▶ 北の歴史をもう一歩たどるなら、奥入瀬渓流・十和田湖 歴史さんぽ|みちのくを描いた3作を比べるへ。



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