せがわまさき『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』全5巻のあらすじと結末|甲賀と伊賀、二十人の忍びが殺し合う理由【山田風太郎原作】

バジリスク〜甲賀忍法帖〜 全5巻 あらすじと結末 ブランドカード 漫画

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徳川家康が次の将軍を誰にするか——その決め方が「忍者を十人ずつ戦わせ、生き残った側が推す子を後継とする」だったら。せがわまさきさんの『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』は、山田風太郎さんの伝奇小説『甲賀忍法帖』を全5巻で漫画化した作品です。慶長十九年(1614年)の伊賀を舞台に、四百年続いた恨みと、たったひとつの恋が同時に描かれます。

『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』とはどんな作品か

原作は山田風太郎さんが1958年に発表した長編『甲賀忍法帖』。のちに何十冊も続く「忍法帖シリーズ」の第一作で、日本の伝奇小説の方向を決めた一冊とされています。その原作を、せがわまさきさんが講談社『ヤングマガジン』で漫画化したのが本作です。

漫画版は全5巻で完結しています。第1巻の電子版は2003年5月2日配信、本の長さは204ページ。※巻数・配信日はAmazon商品ページの登録情報より。2005年にはテレビアニメ化もされ、忍者ものの代表作として今も名前が挙がり続けています。

タイトルの「バジリスク」は、見つめるだけで相手を殺すという西洋の伝説の蛇。主人公の甲賀弦之介が持つ「瞳術」を指しています。和の題材に洋の異名をかぶせたこの一語が、作品の手触りをよく表しています。

あらすじ|四百年の約定が破られた夜から

甲賀卍谷(まんじだに)と伊賀鍔隠(つばがくれ)。作中の設定では、この二つの忍びの里は四百年にわたって殺し合いを続けてきましたが、徳川の世に入って不戦の約定が結ばれ、辛うじて均衡を保っていました。

甲賀の頭領の孫・弦之介と、伊賀の頭領の孫・朧(おぼろ)は、その約定の証として婚約しています。里の敵同士でありながら、二人だけは互いを憎んでいない——物語はその一点に賭けられています。

ところが駿府の大御所(徳川家康)のもとで、次の将軍を誰にするかという問題が持ち上がります。作中では、その決着方法として両家から十人ずつを選び、生き残った側の推す子を跡継ぎとするという裁定が下されます。約定は破棄され、名を記した巻物が両家に渡されます。死んだ者の名は、血のように滲んで消えていきます。

こうして、婚約したばかりの二人は、殺し合う二十人の当事者になります。

結末はどうなるのか(ネタバレは最小限に)

結末の具体的な描写はここでは書きませんが、この作品が甘い救いを用意しないタイプの物語であることだけは先にお伝えしておきます。二十人の名は一つずつ消えていき、勝敗は最後の数ページで確定します。

重要なのは、勝った側にも喜びがないことです。里の勝利と、二人の願いは最初から両立しないように設計されている——読み終えたとき、私は「これは忍者バトルの外見をしたロミオとジュリエットだ」と思いました。恨みの継承と、それを終わらせようとした個人の話です。※忍術合戦や不戦の約定は原作者の創作です。

読みどころ1:忍法が「超能力」ではなく身体の異形として描かれる

本作の忍法は、術を唱えて発動する魔法ではありません。体そのものが武器に変形している——粘液を操る、体を伸ばす、傷を移す、相手の殺意を跳ね返す。どれも「その体で生まれてしまった」という業(ごう)の匂いがします。

だから戦いは、技の格付けではなく相性と間合いの読み合いになります。強い者が勝つのではなく、噛み合った者が勝つ。この設計が、五巻という短さで二十人を描き切ることを可能にしています。

読みどころ2:せがわまさきの筆が、山田風太郎の速度に追いつく

原作の魅力は、無駄のない文章で次々と人が死んでいく速度です。漫画版はその速度を落とさず、しかも一人ひとりの死に一枚絵を与えています。斬られる直前の表情、消えていく名前の文字——原作を先に読んでいた私は、この漫画で初めて「巻物の名が滲む」場面の残酷さが腹に落ちました。

絵柄は艶があり、色気と血の匂いが同居しています。忍者ものというジャンルの湿度を、そのまま画面にしたような作品です。

読みどころ3:史実の後継争いに、創作の殺し合いを接ぎ木する構造

徳川秀忠の子である竹千代(のちの三代将軍・家光)と国千代(のちの徳川忠長)のあいだで後継が揺れたこと、そして最終的に家光が三代将軍となったことは史実です。乳母の春日局が大御所家康に訴えたという逸話も広く語られています。※逸話の細部には諸説があります。

本作が創作したのは、その決着を忍びの殺し合いに委ねたという一点だけ。史実の骨組みを一本だけ残し、そこにフィクションを継ぐ——この節約が、作品全体に「あり得たかもしれない」感触を与えています。歴史ものとして読むなら、ここが一番面白い部分です。

現代の私たちへ

弦之介と朧が背負わされたのは、自分が始めたわけでもない四百年ぶんの恨みでした。ルールを決めたのは遠い駿府の誰かで、命を賭けるのは現場の二十人です。

受け継いだ対立を、自分の代で終わらせられるか。決めた人と、負う人が別であるという理不尽に、それでも向き合うか。忍者の物語のかたちをしていますが、問われているのは組織の中にいる私たち自身のことだと思います。

こんな人におすすめ

  • 短い巻数で完結する歴史・伝奇まんがを探している人(全5巻)
  • アニメ『バジリスク』を観て、原作の漫画版も読みたい人
  • 山田風太郎の忍法帖シリーズに漫画から入りたい人
  • 江戸初期、徳川三代の将軍継承問題に興味がある人

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全5巻と短いので、1巻で絵柄と速度が合うかを確かめ、合えばそのまま最終巻まで一気に読むのが向いています。原作小説も文庫で手に入ります。

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よくある質問

『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』は完結していますか?

はい。漫画版は全5巻で完結しています。続編にあたる『バジリスク〜桜花忍法帖〜』は別作品で、こちらは時代が下った世代の物語です。

原作小説と漫画版、どちらから読むべきですか?

どちらからでも読めます。展開の速さと絵の強さで入りたい人は漫画版から、文章の切れ味を味わいたい人は角川文庫の原作からがおすすめです。私は原作を先に読みましたが、漫画版で人物の顔がついてから読み返すと理解が深まりました。

史実の出来事はどこまで本当ですか?

竹千代(家光)と国千代(忠長)の後継問題と、家光が三代将軍になったことは史実です。甲賀と伊賀の忍術合戦、不戦の約定、巻物の裁定は原作者の創作です。※逸話の細部には諸説があります。

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まとめ

『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』は、徳川三代の後継争いという史実の一点に、四百年の恨みと二十人の忍びを接ぎ木した全5巻の伝奇まんがです。忍法は身体の異形として描かれ、勝敗は相性で決まり、そして勝者にも喜びは残りません。受け継いだ対立を自分の代で終わらせられるか——読み終えたあとに残るのは、その問いです。短くて濃い一作を探している人に、まず手に取ってほしい作品です。

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